スポーツの大会などでステロイド剤や筋力増強剤などの薬物を使用するとドーピング違反として処罰の対象になります。
大麻も例外ではなく、上記の薬物と同様に大会前などに利用すると、ドーピング違反になることが分かっています。
では、近年日本で注目を集めており、大麻由来の成分でもある「CBD」はどうなのでしょうか?
本記事では、CBDはドーピング検査で違反になるのかについて解説しています。
- CBDはドーピング検査で違反になるのか
- ドーピング検査で陽性になるCBD製品
- CBDがアスリートにおすすめな理由
そもそもCBDとは?

CBDとは、カンナビジオールの略称であり、成熟した大麻の種子や茎から抽出されるカンナビノイド成分の1つです。
CBDの安全性の高さは、WHO(世界保健機関)にも認められており、日本でも合法的に利用することができます。
CBDは過去の研究から、
- リラックス効果
- 睡眠の質の向上
- 抗炎症作用
- 集中力アップ
- 抗菌作用
- 鎮痛作用
- 血圧の低下
などの効果が期待されています。
また、CBDは上記の効果から様々な疾患に対しても効果が期待されており、実際に海外ではてんかんの治療薬として利用されています。
CBDはドーピングに引っかかる?
CBDは、様々な効果が期待されており、日本でも合法的に利用することができます。
ここでは、そんなCBDがドーピング検査で違反になるのかについて詳しく解説したいと思います。
CBDはドーピング検査で違反にならない

ドーピング検査で違反となる禁止薬物は、WADA(世界アンチ・ドーピング機構)によって規定されています。
WADAとは、世界各国における公正なドーピング防止活動の促進とドーピングの根絶を目的とした国際機関のことです。
そんな中、CBDは2018年WADA(世界アンチ・ドーピング機構)によって禁止薬物リストから除外されました。
そのため、CBDはアスリートが大会などで利用しても、検査で違反になることはありません。
THCはドーピング検査で違反になる

THCは、大麻の主成分であるカンナビノイドであり、精神活性作用があることが分かっています。
THCは、WADAによって禁止薬物に指定されており、検査で違反になると、失格や出場停止処分になります。
しかし、一部の科学者からは、THCには精神面や肉体面でのパフォーマンスを向上する効果は無いのではないかという意見が挙げられています。
実際に、WADAもTHCに関する規定を改定する姿勢を見せており、2013年にはTHCの尿中閾値の限界量を緩和しています。
現在は禁止されているTHCですが、今後パフォーマンス向上の効果を否定できれば、CBDと同様に禁止薬物リストから除外されるかもしれません。
CBD製品の種類によって注意が必要
ここまでの説明から、CBDは検査で違反にならないことがお分かりいただけたと思います。
しかし、使用するCBD製品の種類によっては、検査で違反になる場合があります。
ここでは、CBD製品の種類を3つご紹介すると共に、どの製品を使えばドーピング違反にならないかを解説したいと思います。
フルスペクトラム

フルスペクトラムとは、麻の全ての成分(CBDやTHC・CBGなど)を含んだCBD製品のことです。
この製品は、禁止薬物であるTHCを含んでいるためドーピング検査では違反となります。
フルスペクトラムは、日本では法律によって規制されていますが、海外の一部地域では利用・販売することができます。
そのため、海外産のCBD製品を購入している方や、海外に住んでいる方は、購入する際に成分表示などを確認しましょう。
ブロードスペクトラム

ブロードスペクトラムとは、CBDやCBG・CBNなどのTHC以外の大麻成分を含んだCBD製品のことです。
このCBD製品はTHCを含んでいないため、日本でも合法的に利用できますが、ドーピング検査では違反になる可能性があります。
そもそも、WADAが禁止リストから除外してるのはCBDのみであり、CBGやCBNなどのカンナビノイドは使用が許可されていません。
現時点では、ブロードスペクトラムが原因と断定されたドーピング違反は確認されていませんが、検査で陽性になる可能性は十分に考えられます。
そのため、アスリートの方がブロードスペクトラムを利用することはおすすめできません。
https://cbdnosusume.com/cbd-broad-spectrum/アイソレート

アイソレートとは、大麻から純粋なCBDのみを抽出したCBD製品のことです。
この製品は、CBD以外の成分が含まれていないため、上記の2種類の製品と異なり、ドーピング検査で違反になることはありません。
また、アイソレートはブロードスペクトラムより期待できる効果は弱いですが、ブロードスペクトラムの約2〜3分の1の値段で購入することができます。
これらのことから、アスリートの方がCBD製品を利用したい場合は、アイソレート製品を利用することをおすすめします。
CBDがアスリートにおすすめな理由
ドーピング検査で陽性にならないためには、純粋なCBDのみを含んだアイソレート製品を利用することが重要になります。
では、CBDを利用することで、どのような効果が期待できるのでしょうか?
ここでは、CBDを利用することで期待できる6つの効果をご紹介します。
痛みを緩和する

試合や練習の中で怪我をしてしまい、体を痛めた経験がある方は多いと思います。
CBDは、「TRPV1」と呼ばれる受容体に作用することで、痛みを緩和する効果が期待されています。
「TRPV1」とは、痛みや刺激を感じる上で重要な役割を担っている受容体であり、末梢神経に多く存在しています。
実際に、2019年の動物実験では、CBDは「TRPV1」に直接的に作用することで、痛みを緩和したことが報告されました。
また、CBDには、市販の鎮痛剤のような胃腸障害や頭痛などの副作用が無いとされています。
これらのことから、スポーツを行う中で感じた痛みを緩和したい方は、CBDを利用することをおすすめします。
炎症を緩和する

スポーツをする中で、膝などの関節などに負荷がかかり、慢性的な炎症が引き起こされてしますことがあります。
CBDには抗炎症作用があるとされており、炎症を緩和する効果が期待されています。
2017年の研究では、変形性関節症にかかったマウスにCBDを(100〜300μg)投与し、有用性を評価する実験が行われました。
変形性関節症とは、関節の摩擦によって炎症などが生じる疾患であり、アスリートにも多く起こるとされています。
実験の結果、CBDはマウスの関節の炎症を緩和したことが明らかになりました。
さらに、CBDは神経保護作用によって、関節の炎症を予防することも明らかになりました。
この研究は、動物レベルですが、CBDの関節などに起こる慢性炎症に対する効果の有用性を示しています。

不安やストレスを軽減する

アスリートがパフォーマンスを最大限発揮するためには、不安やストレスを軽減することが重要になります。
CBDには、ストレスや不安を軽減する「セロトニン」の分泌を促進する効果があることが分かっています。
アメリカの研究では、複数のラットに対してCBD(5mg/日)を3週間投与する実験が行われました。
この実験では、CBDの慢性投与により、ラットのセロトニン分泌量の増減が評価されました。
結果、CBDを投与されたラットは、セロトニンの分泌量が増加することで、抗パニック効果を誘発したことが示唆されました。
これらのことから、ストレスや不安を軽減したい方は試しにCBDを摂取することをおすすめします。
睡眠の質を高める

トレーニングや大会の疲労を回復をするためには、質の高い睡眠を取ることも重要になります。
CBDには、睡眠の質を高める効果が期待されています。
2013年の研究では、CBDをラットに投与し、睡眠に対する有用性を評価しました。
結果、CBDはマウスのノンレム睡眠(深い睡眠)割合と睡眠総時間を増加させたことが示されました。
さらに、CBDには、眠気を引き起こす脳内物質である「アデノシン」の蓄積を促進させる効果があるとされています。
そのため、CBDを摂取することで睡眠の質を向上させることに加え、入眠をスムーズにすることも期待できます。
疲労回復

CBDは、トレーニングや大会などによる疲労を回復する効果も期待されています。
疲労は、体内で発生した「活性酸素」が細胞機能を低下させることで起こるとされています。
CBDには、抗酸化作用があるとされており、体内の「活性酸素」を除去することで疲労を回復する効果が期待できます。
2021年の研究では、CBDには強い抗酸化作用のある「ビタミンE」と同等の効果があることが報告されました。
この結果は、CBDが疲労の原因となる「活性酸素」の働きを抑制する可能性を示唆しています。
脳に対するダメージを緩和する

ラグビーなどの激しいスポーツは脳を損傷しやすく、手足の麻痺などの神経障害などが起こることがあります。
CBDは、脳の外的損傷によって起こる「神経障害」を改善する効果が期待されています。
2019年の研究では、CBDを外傷性脳損傷を負ったマウスに投与し、有用性を評価する実験が行われました。
外傷性脳損傷とは、脳に強い衝撃が加わることで、脳が傷ついたり出血を起している状態のことです。
この実験では、11日間または14日間、マウスに10%のCBDオイルを経口投与しました。
結果、CBDはマウスの脳損傷による「神経障害」や「社会的行動障害」を改善したことが報告されました。
この研究は、動物実験レベルですが、CBDの脳損傷に対する新たな治療法としての可能性を示唆しており、今後に注目が集まります。
CBDとスポーツ業界の現状
先程の説明から、CBDを利用することで、どのような効果を期待できるかお分かりいただけたと思います。
ここでは、CBDとスポーツ業界の現状について解説したいと思います。
CBDは多くのアスリートに利用されている

CBDは先程紹介したような効果から、多くのアスリートにも利用されています。
日本では、K-1王者である武尊選手などもストレス緩和のためにCBDを愛用していることがわかっています。
海外では、アメリカンフットボール・バスケットボール・テニスなどの幅広い種目の選手にも利用されています。
例えば、元アメリカンフットボール選手の「Terrell Davis」は、CBDを摂取し始めてから鎮痛剤を一切利用しなくなった方もいることがわかっています。
このように、CBDはパフォーマンスを最大限発揮するために、日本を含めた世界中のアスリートに利用されています。
CBDメーカーはスポンサーにもなっている

近年では、アスリートやスポーツマンに向けたCBD製品が世界中で販売されるようになってきています。
そんな中、CBDメーカーがスポーツ大会やイベントのスポンサーを務めることも珍しいことではありません。
実際に、過去には日本のCBDブランドである「+WEED(プラスウィード)」が格闘技団体である「RIZIN」のスポンサーを務めていました。
また、海外でもCBDメーカーが多くの大会やイベントのスポンサーを行なっていることがわかっています。
まとめ
今回は、CBDはドーピング検査で違反になるのかについて詳しく解説しました。
CBDは、WADAによって禁止薬物リストから除外されているため、検査で違反になることはありません。
しかし、CBD以外のカンナビノイド成分であるTHCやCBN・CBGなどの成分は使用が許可されていないため、検査では違反になります。
CBD製品は、主に3種類がありますが検査で違反にならないのは、アイソレート製品のみになります。
また、CBDはスポーツに対して
- 痛みの緩和
- 炎症の緩和
- ストレスや不安の緩和
- 睡眠の質の向上
- 脳に対するダメージを緩和する
などの効果が期待されており、多くのアスリートにも利用されています。
アスリートの方は、純粋なCBDのみを含んだアイソレートを利用することで、パフォーマンスの向上を目指してみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
- Cannabinoid Ligands Targeting TRP Channels
- Attenuation of early phase inflammation by cannabidiol prevents pain and nerve damage in rat osteoarthritis
Involvement of serotonin-mediated neurotransmission in the dorsal periaqueductal gray matter on cannabidiol chronic effects in panic-like responses in rats - Effects of acute systemic administration of cannabidiol on sleep-wake cycle in rats
- Oral Cannabidiol Prevents Allodynia and Neurological Dysfunctions in a Mouse Model of Mild Traumatic Brain Injury
- CBG, CBD, Δ9-THC, CBN, CBGA, CBDA and Δ9-THCA as antioxidant agents and their intervention abilities in antioxidant action