CBDは、リラックス効果などから日本でも注目を集めており、オイルやベイプなど様々な種類の商品が販売されています。
近年、そんなCBDに次ぐ新たな成分として「THCV」が注目を集めていることをご存知でしょうか?
本記事では、THCVの基本情報や主な効果・THCとの違いについて詳しく解説します。
- THCVはどんなカンナビノイドか
- THCVの主な効果
- THCVとTHCの違い
THCVとは?
THCVとは、テトラヒドロカンナビバリンの略称であり、CBDと同じく麻から抽出されるカンナビノイドという成分の1つです。
THCVは、過去の研究から様々な医学的利点があることが分かっており、新たな治療薬としての可能性が期待されています。
ここでは、そんなTHCVの安全性や違法性・精神作用があるかなどについて詳しく解説します。
THCVの安全性と違法性

THCVは、CBDのように研究が十分ではないため断言はできませんが、比較的安全性は高いと考えられています。
2016年の研究では、成人の被験者に対してTHCV(1日最大10mg)を13週間投与する実験が行われました。
結果、THCVには目立った副作用がみられず、忍容性が良好であることが報告されました。
「忍容性が良好」とは副作用がほとんど無く、あったとしても非常に軽いという意味です。
また、THCVは大麻取締法によって規制されていないため、日本でも合法で使用することができます。
THCVの精神作用

THCVは、摂取量によって精神活性作用の有無が異なると考えられています。
過去の研究では、高容量のTHCVは精神活性を引き起こす可能性があることが報告されました。
しかし、THCVはCBDやTHCなどのカンナビノイドと違い麻に少量しか含まれていません。
そのため、精神活性作用を感じるほどの多量のTHCVを摂取することは現実的ではありません。

THCVが体に作用するメカニズム

THCVは、人体にあるCB1・CB2受容体に直接的に作用することで様々な効果を引き起こすと考えられています。
CB1受容体は、主に中枢神経に分布しており、作用することで鎮痛作用や多幸感などを引き起こすとされています。
一方、CB2受容体は、主に末梢神経に分布しており、作用することで抗炎症作用などを引き起こすとされています。
また、CBDはTHCVと違いCB1・CB2受容体に間接的に作用することが分かっています。
THCVの効果
THCVには、主に下記の効果が期待されています。
- 抗けいれん作用
- 抗炎症作用
- 食欲抑制
- 神経保護作用
ここでは、THCVに期待できる効果を研究やエビデンスを基に詳しく解説します。
抗けいれん作用

THCVは、CBDと同様に抗けいれん作用が期待されています。
2010年の研究では、てんかんのマウスにTHCVを投与することでけいれんに対する有用性を確かめる実験が行われました。
結果、THCV(0.25 mg/kg)はマウスの発作の発生率を有意に減少させたことが報告されました。
今回の研究は動物実験ですが、今後THCVの臨床試験が行われることで、CBDの様にてんかんの治療薬として利用されるかもしれません。

抗炎症・鎮痛作用

THCVは、他のカンナビノイドと同様に抗炎症作用が期待されています。
2010年の研究では、炎症性疼痛にかかったマウスにTHCVを投与することで有用性を評価する実験が行われました。
結果、THCVはマウスの後足に誘発された炎症や痛覚過敏の兆候を軽減したことが明らかになりました。
また、この研究から、THCVはカンナビノイド受容体に作用し、炎症や痛みを緩和していることも明らかになりました。
今回のTHCVの研究は動物実験であり、人体に対する影響が明らかになっていないため、今後の研究に期待が高まります。
食欲抑制

THCVには食欲を抑制する効果が期待されており、海外では「ダイエットウィード」と呼ばれています。
2009年の研究では、動物に対してTHCVを投与し摂食行動を評価する実験が行われました。
実験の結果、低容量のTHCVは、食欲低下及び体重減少を誘発したことが明らかになりました。
さらに、THCVを投与された動物は、翌日にリバウンドが見られず通常の摂食行動に戻ったことも報告されました。
これらのことから、THCVは今後臨床試験が行われることで、肥満に対する新たな治療薬として利用されることが期待されています。
神経保護作用

THCVには、神経保護作用が期待されています。
2011年の研究では、マウスとラットに対してTHCVを急性または慢性投与し、有用性を評価する実験が行われました。
実験の結果、THCVには神経保護作用があり、パーキンソン病の進行を遅らせ、症状を改善する可能性が示唆されました。
パーキンソン病とは、体の震えや筋肉の硬直などを伴う神経難病の1つであり、根本的な治療方法は現在も分かっていません。
そのため、THCVは今後研究が進むことで、パーキンソン病の新たな治療手段として利用されることが期待されています。
血糖値を調整する効果

THCVは過去の研究から、血糖値を調整する効果が期待されています。
2016年の研究では、2型糖尿病患者62名に対してTHCVまたはプラセボ(偽薬)を投与することで有用性を評価する実験が行われました。
実験の結果、THCVは被験者の血糖値を減少させ、インスリンの合成・分泌を行う膵臓 β 細胞の働きを改善したことが報告されました。
現在日本では、5・6人に1人が糖尿病の危険があるとされており、糖尿病はがん同様に深刻な国民病の1つとして考えられています。
血糖値が気になる方や糖尿病に悩んでいる方は、THCVを含んだCBD製品を試しに利用してみることをおすすめします。
禁煙

THCVには、禁煙効果が期待されています。
2019年の研究では、ラットやマウスなどにTHCVを投与し、ニコチン依存症に対する有用性を評価する実験が行われました。
実験の結果、THCVはラットのニコチン探索行動や、マウスの離脱症状を有意に軽減させたことが明らかになりました。
また、CBDは過去の臨床試験から、THCVと同様に禁煙に対して効果があることが分かっています。
最近では、THCVを含んだCBDリキッドなども増えてきています。
禁煙をしたい方は、タバコの代わりにTHCVやCBDを含んだベイプを利用してみてはいかがでしょうか
統合失調症の治療

統合失調症とは、妄想や幻聴などの症状を伴う精神疾患の1つであり、日本では約80万人の患者がいるとされています。
統合失調症は、治療に「セロトニン5-HT1A受容体作動薬」が利用されることがあります。
THCVは、この治療薬と同様にセロトニン5-HT1A受容体を活性化する効果が期待されています。
実際に、2015年の動物を利用した研究では、THCVは5-HT1A受容体を活性化したことが報告されました。
さらに、この研究の結果では、THCVは統合失調症の認知症状や陽性症状などの一部を改善する効果があると結論付けられました。
そのため、THCVは今後研究が進むことで、統合失調症の新たな治療薬として利用されることが期待されています。
THCVは薬の副作用を緩和する
THCVは先程紹介した効果に加えて、複数の薬の副作用を緩和する効果が期待されています。
ここでは、薬の副作用に対して効果を示したTHCVの研究を2つご紹介します。
パーキンソン病の治療薬

THCVは、パーキンソン病の治療薬の副作用を緩和することが期待されています。
2020年のスペインの研究では、マウスにTHCVを投与し、「L-ドーパ」(抗パーキンソン薬)の副作用に対する有用性を評価しました。
「L-ドーパ」は、ドーパミン不足を補う抗パーキンソン薬であり、長期的に服用すると不随意運動などの副作用を引き起こすとされています。
実験の結果、THCVと「L-ドーパ」を一緒に投与したマウスは他のマウスと比べ、副作用の発生が遅くなり、程度が軽減したことが明らかになりました。
「L-ドーパ」の副作用は世界的にも大きな問題となっており、今後のTHCVの臨床試験に対して期待が高まります。
癌の治療薬

THCVは、CBDと共に摂取することで、一部の抗がん剤の副作用を緩和する効果が期待されています。
2022年の研究では、マウスにTHCVとCBDを一緒に投与し、パクリタキセルの副作用に対する有用性を評価する実験が行われました。
パクリタキセルは、乳癌や肺癌の治療に用いられる抗がん剤であり、痺れや神経障害などの副作用があるとされています。
実験の結果、CBDとTHCVを一緒に投与したマウスは、他のマウスと比べ、パクリタキセルの副作用である痺れや神経障害に対して効果を示したことが報告されました。
今回ご紹介したのは動物実験ですが、今後研究が進むにつれて、CBDとTHCVが抗がん剤の副作用を軽減する一つの手段になるかもしれません
THCVとTHCの違い

ここまで、THCVの基本情報や主な効果について詳しく解説しましたが、名前が似ている「THC」と何が違うのでしょうか?
まず、THCVとTHCは違法性が異なります。
THCとは、強い精神作用が認められているカンナビノイドであり、日本では大麻取締法によって規制されています。
そのため、THCVは日本で使用することができますが、THCは使用や譲渡・譲受を行うことができません。
また、THCVは希少性が高いため、THCに比べ効果に対するエビデンスや実験が十分ではありません。
まとめ
今回は、THCVの基本情報や主な効果・THCとの違いについて詳しく解説しました。
THCVは、CBDのように研究が十分ではないため断言はできませんが、比較的安全性は高いと考えられています。
THCVには、過去の研究から下記の効果が期待されています。
- 抗けいれん作用
- 抗炎症・鎮痛作用
- 食欲抑制
- 神経保護作用
- 血糖値を調整する効果
- 禁煙
- 統合失調症の治療
また、THCVは大麻取締法によって規制されていないため、日本でも合法で使用することができます。
しかし、THCVはCBDに比べ安全性や効果に対する臨床試験が十分ではないため、今後の研究の進展に注目しましょう。
【参考文献】
- The diverse CB1 and CB2 receptor pharmacology of three plant cannabinoids: delta9-tetrahydrocannabinol, cannabidiol and delta9-tetrahydrocannabivarin
- Synthetic and plant-derived cannabinoid receptor antagonists show hypophagic properties in fasted and non-fasted mice
- Symptom-relieving and neuroprotective effects of the phytocannabinoid Δ⁹-THCV in animal models of Parkinson’s disease
- Δ8‐Tetrahydrocannabivarin has potent anti‐nicotine effects in several rodent models of nicotine dependence